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AoiMoeのおはなし

アイカツロス症候群のリハビリ活動二次創作

星宮いちごはお風呂場でおしっこする派だと思う

星宮いちごはお風呂場でおしっこする派だと思う アイカツ! アイカツ!二次創作
注意

この話には、お食事中に読むのはちょーっと憚られるような尾籠な表現が含まれていますが、性的な表現はないので健全だよ!お子様にも安心!

星宮いちごはお風呂場でおしっこする派だと思う

ここはスターライト学園。日々、アイドルたちが切磋琢磨し、アイドルとしての高みを目指している学び舎。その片隅には、アイドルたちが羽を休める寮がある。

昨年の秋、ここに一人の新人アイドルがやってきた――星宮いちご。お弁当屋の娘だった彼女は、おしゃもじをマイクに持ち替えるべく、この学園へと編入してきた。後にトップアイドルにまで登りつめる彼女だったが、それはまた別のお話。

実は、彼女には一つ、人に言うにはいささか憚られるような秘密があった。この学園で、その秘密を知っているのは、親友でルームメイトの霧矢あおい、ただ一人。……今のところは。

「ふう、疲れたー。今日は帰ってくるの遅くなっちゃったね、あおい」

「ホント、撮影がこんなに延びるなんて……あっ、もうこんな時間、いちご、すぐ支度してお風呂行くよ!」

各種設備が充実しているスターライト学園。当然この寮にも立派な大浴場が設置されている。二人は脱衣場で生まれたままの姿となり、浴場の扉を開ける。

――カララララ……

「誰もいない……。さすがにこんな遅い時間だと、お風呂に来る人もいないか」

「私たちもさっさと入っちゃお」

二人並んで洗い場に座り、蛇口をひねる。二つのシャワーからお湯が勢いよく噴き出し、あたり一面に湯気がたちこめる。

――キュッ

……ふいに、星宮いちごが何かを思い出したようにお湯を止め、洗い場の隅に移動してしゃがみ込む。……刹那。

――・・・・・・・・・・・……

「ふい~~~~」

「ちょ、いちご、お風呂場でおしっこするの、前からやめなさいって言ってるでしょ!」

「えー、でも、排水口に向かって直接してるし、した後ちゃんとお湯で流すし、湯船に入る前に体だって洗うから汚くないよ」

「そういう問題じゃないわよ……」

……星宮いちごの秘密――そう、それは、自分一人だけ、あるいは霧矢あおいと二人きりの時、お風呂場でおしっこをする癖がある、ということなのだ。……みなさんはご存じだろうか。世の中には、この星宮いちごのような≪お風呂場おしっこ愛好家≫が意外と多いことを。

しかしまあそんなわけで、星宮いちごがお風呂場でおしっこをするのは、霧矢あおいにとっては毎度のことであり、この件をこれ以上追及することもなく、半ばあきれ顔で自分の髪の毛を洗い出した。星宮いちごも排水口にお湯を流して後始末をした後、霧矢あおいの隣に戻って再び蛇口をひねって体を洗う。

二人とも洗い終わり、髪の毛をタオルでまとめてから湯船に浸かる。ここで霧矢あおいは先ほどの件を蒸し返した。

「……あのね、いちご。ここは自分の家のお風呂じゃなくて寮のお風呂なんだから、さすがにおしっこをするのはやめた方がいいと思うの。他の人の目もあるし」

「さすがに他に人がいるときにしたりはしないから大丈夫だよ」

「そうは言ってもねえ……アイドルのイメージってものがあるでしょ」

「アイドルは恋愛禁止、トイレに行くのも禁止……って奴?」

「そこまでは言ってないけど……」

「いいからいいから。これ、一度やると癖になっちゃうんだよね、スッキリして気持ちよくってさ。あおいも一度やってみなよ」

「もー、なに言ってるの。私がそんなこと、するわけないでしょ」

そんな会話をしつつ、広々とした湯船を満喫する二人。

……しばらくして。

「それじゃあ、私はそろそろ上がろうかな。あおいは?」

「私はもう少し浸かってる」

「そっか。ホント、あおいはお風呂大好きだよね。じゃあ、お先ー」

上がり湯がわりのシャワーを浴びて、体に付いた水分をふき取り、星宮いちごは脱衣場へと戻っていく。

――カララララ……ピシャッ

そうして、霧矢あおい一人が浴槽に取り残された。

「♪~」

しばらく鼻歌を歌っていたが、ふいにそれが止まる。彼女の脳裏には、先ほどの星宮いちごの言葉がよみがえってきたのだった。

――これ、一度やると癖になっちゃうんだよね、スッキリして気持ちよくってさ

「……」

――あおいも一度やってみなよ

「……いけないいけない、何考えてるの私。私がそんなこと……するわけないじゃない」

――ザザーーーッ

湯船から上がり、洗い場でシャワーを浴びる。

――シャーーーーーー……

シャワーヘッドから細かく粒状に噴き出したお湯が、心地よく皮膚を打ち付ける。やがて水滴は一つの流れへとまとまって、体の表面から床へと滑り落ち、浴室のタイルの上をアメーバのように這ってゆく。そしてついに、その先端が、洗い場の隅にある、あの排水口へと流れ落ちていった。

――キュッ

お湯を止めた後、水栓を握ったまま、何か物思いに耽るかのように、しばらく静止する。その時、彼女の脳裏に浮かんでいたのは、おしっこをしながら恍惚としていた星宮いちごの顔だった。

そして……

「……ちょっとだけなら……」

そう独りごち、霧矢あおいは周囲の様子を確認しながら、しずしずと洗い場の隅の方へと移動してゆく。……少し躊躇しつつも、遂に、意を決して排水口の上にしゃがみ込んだ。

――・・・……・・・・・・・・……

「あっ……これは確かに穏やかじゃ……」

その時だった。

――ガラッ

「ねえ、あおい~、そこに、私の洗顔フォーム、忘……」

洗い場の隅にしゃがみこんでいる親友の後姿を見て、固まる星宮いちご

扉の開く音と、それに続く親友の声に驚いて、ビクッと体を震わせる霧矢あおい。

――ゞゞ!!

全身に力が入り、残るすべてを勢いよく出し尽くしてしまったあと、恐る恐る後ろを振り返る。

「……い、いちご……こ、これは違うの!違うのよ!!」

2

大浴場の隣にある休憩室のソファーに、少し離れて座る二人。この休憩室の壁には大画面のテレビが備え付けられており、今はちょうど番組の変わり目の時間帯なので、スポットCMが次から次へと流れている。

――キラめきはアクエリアス

画面の中では、フューチャリングガールのスペイシーなコーデに身を包んだ霧矢あおいが、エレクトロな音楽と未来的なCGをバックに、スポーツドリンク「ミストウォーター」の500mLペットボトルを持ってウィンクをしている。

――気分爽快、アイソトニック霧矢水!ミストウォーターは体液と同じ浸透圧だから、速やかに水分補給!スポーツや入浴後に……これは穏やかじゃない!

そんな画面を、星宮いちごは何にも考えていないような顔をしてぼーっと眺め、その隣では、霧矢あおいが両手で顔を覆い隠して微動だにしない。彼女の耳が真っ赤なのは、おそらく、湯上りだからという理由だけではあるまい。

しばらく二人はそのまま無言で同じ姿勢を保っていたが、やがて、霧矢あおいが絞り出すように声を発した。

「私、もうお嫁にいけない……」

「大丈夫だよあおい、見たの私だけだから……いざとなったら私があおいのこと、お嫁に貰ってあげるし……」

「うう……」

「で、でもさ、気持ちよかったでしょ?何というか、トイレでするのとは違う解放感というか爽快感というか……」

「……確かに……それはそうだったけど……」

「私、思うんだけどさ、お風呂場でおしっこするのを恥ずかしく感じるのは、他に同じことをする人があんまりいないから……ってだけのことなんじゃないかな」

「そうかしら……」

「だからね、みんながお風呂場でおしっこするようになれば恥ずかしくないし、世の中の人たちは、もっとお風呂場でおしっこをするべきだと思うんだよね、私」

言っていることが無茶苦茶である。言った本人もそう思ったらしく、慌てて取り繕う。

「……なーんて、さすがにそれは言いすぎだよね」

当然、そんな戯言を、あのクールビューティ霧矢あおいが容れるわけはあるまい……と思いきや。

「……そうか。お風呂場でおしっこをするのが普通になれば、今日の私の失態も失態ではなくなり、晴れて汚名も濯がれる、というわけね……フフフ……」

「へ?……あ、あおい……?」

「よし、いちご、そうと決まったら、いちごにも協力してもらうわよ。いい?」

「いいけど……何する気?」

「題して、お風呂場おしっこ大作戦!」

3

翌日の夜。星宮いちごと霧矢あおい、そしてこれに紫吹蘭が加わった三人のユニット、ソレイユが、ジョニー別府の指導のもと、激しいダンスレッスンを行っている。

「ほら、スター宮ハニー、少し遅れてるぞ!」

「はいっ」

「霧矢ハニーはもう少し指先のキレを意識して」

「はいっ」

「紫吹ハニーはもっと大胆に」

「はいっ」

……と、まあそんな感じでレッスンを重ねていった。

「よーし、もうすっかり夜遅くなってしまったし、今日はこれくらいにしておくか」

三人は息を整えながら、タオルで顔を拭いたり、例のミストウォーターを飲んで水分補給をしたりしている。そんな様子を眺めながら、ジョニー別府が星宮いちごに声を掛ける。

「今日は、スター宮ハニーが自分から『ソレイユに足りないものはダンスの一体感だと思うので特訓してください』と言ってきてくれて、このジョニーも嬉しいぜ、イェイ!」

「ソレイユのリーダーとして、いま、何が必要なのかって考えてみたんです」

「そうか……。確かに、今日のレッスンでだいぶ良くはなったが、まだまだ十分とは言えない。ここからさらに一体感を高めた方が、観客にももっともっとアピールするだろうな。そのためには、これからも三人で精進することだ」

「はい!」

「……それにしても、いちごはいつも突然こういうことを思いつくよな。この特訓も、今朝、いちごがいきなり『今日は晩御飯を軽く済ませてダンスのレッスンをするよ』って言い出して決まったんだからな。……まあ、あたしもいい練習になったけどさ」

「フフッヒ」

……実は、この特訓が、自分を誘い出す口実だとも知らず、紫吹蘭はこんな、感心するとも呆れるともつかない感想を述べるのだった。なお、星宮いちごは夕食でご飯を三杯お代わりした。軽く済ませる、とは一体。

「普段は大盛り三杯だけど、今日は軽く三杯だったからね」

「……突然どうした?」

「ううん、なんでもない」

そんな二人のやりとりに、霧矢あおいが割り込んでくる。

「ふう……それにしても汗をかいたわねえ……。そうだ、いちご、蘭、これからお風呂に行かない?今の時間なら空いてると思うし」

「うん、寝る前に汗を流してさっぱりしたいよね」

「そうだな、あたしも行くよ」

紫吹蘭の同意を得たことで、顔を見合わせてうなずく星宮いちごと霧矢あおい。

「じゃあソレイユハニーたち、もう夜も遅いから、汗をしっかり流した後は、すぐに床に就いてぐっすりと眠るんだぞ。休息も大事だからな、イェイ!」

「「「はいっ」」」

かくして、三人は大浴場へやってきた。

――カララララ……

霧矢あおいが浴室の扉を開けて、中を見回す。

「よし、誰もいないわね」

「あおい、ホントにやるの?」

星宮いちごがヒソヒソ声で話しかける。

「だって、まずは一番身近な蘭をこちら側に引き込まないとね」

「どうした二人とも、そんなところで立ち止まって」

後ろから紫吹蘭がやってくる。

「ああ、いやね、こうしてみると、このお風呂場も結構広いなーって、いちごと話してたの」

「……そうか?単に誰もいないからそう感じるだけだろ」

「いいから入ろ入ろ」

三人並んで洗い場に座る。

――シャーーーーーーーーー

「そういえば、蘭とあおいと三人だけでお風呂入るの初めてかも」

「そういやそうだな」

「私とあおいはたまに二人きりの時があるけど」

「いちごも私も、遅くなってから一緒にお風呂に行くことが多いからね」

「あたしはさっさと寝ちゃうからな。というか、二人とも、あんまり夜更かしすると肌に良くないぞ」

「「はーい」」

――キュッ

「そうだ、アレやっちゃおっと」

星宮いちごはそう言うと、おもむろに立ち上がって、例の洗い場の隅に向かい、しゃがみ込む。

そして、それを怪訝そうな目で見つめる紫吹蘭。

「……いちご、そんなところにしゃがんで何をするつもりだ?」

「何って……おしっこだけど」

「はい!?」

「だから、おしっこ」

「いちご……ここはトイレじゃなくてお風呂場だぞ……。あおいからも何か言ってやってくれよ」

すると、霧矢あおいはきょとんとした顔で、

「え?」

と言うなり椅子から立ち上がり、星宮いちごの隣にしゃがみこんだ。

「……え?え?」

紫吹蘭は、目の前で起こっていることへの理解が追い付いていないようだ。

「あれ?蘭はお風呂場でおしっこしない派?」

「しない派も何も……いちご、お風呂場ではおしっこしないだろ普通」

「蘭、知らないの?世の中にはお風呂場でおしっこする派とおしっこしない派がいるんだよ」

「そんなバカな……」

「でも、前の中学では、お風呂場でおしっこする派としない派でだいたい半々だったよね、あおい」

「ええ、そうね」

「そ、そうなのか?」

嘘に決まっている。

「……そして、私といちごは、お風呂場でおしっこする派」

「ねえ、蘭も一緒にしてみない?おしっこ」

「え、い、いや、あたしはいいよ……」

「えー、一回やってみようよ、お風呂場でおしっこすると、すごく開放的で気持ちいいよ」

「って言われてもだな……」

もじもじしている紫吹蘭に、霧矢あおいが謎理論で追い打ちをかける。

「あのね、蘭。こういう風に考えてみたらどうかしら。……これは、私たちソレイユ三人の気持ちを一つにする訓練……。ほら、さっきもジョニー先生が言っていたでしょ、まだまだ私たちには一体感を高められる余地があるって。常々、私といちごが感じている、お風呂場でおしっこする爽快感の素晴らしさを蘭にも知ってもらえれば、より一層、私たちの一体感が高まるんじゃないかな、と思うの。……いいえ、もちろん、蘭がどうしてもお風呂場でおしっこしたくない派なのであれば、私たちも蘭に合わせてお風呂場でおしっこしない派に転向するのも、やぶさかではないけれど……。そうやって、三人の意識を合わせていく……。まさにこれが、ジョニー先生の言っていた三人の一体感を高めるために必要な精進ってことなのだと思うのよね」

冷静に考えれば、連れションごときで一体感もクソもないと思うのだが、まだ混乱から立ち直っていないうちにこういう風に畳みかけられると、紫吹蘭は弱いところがある。

「……」

「大丈夫、私たちが付いてるから、恥ずかしくないよ」

星宮いちごは優しい笑みを浮かべつつそう言うと、床を手のひらで軽くポンポンと叩いて紫吹蘭を見つめ、隣に来るよう無言で促した。その笑みには天使が宿っていた。

「わ、分かった、しょうがないな……」

ちょろい。そうして、紫吹蘭は、二人の間に恐る恐るしゃがみこみ、そして三人は手をつないだ。

「「「ソレイユ、ライジング!」」」

4

こうして紫吹蘭も連れて高みへと登りつめた三人は、結託して学園中のアイドルを勧誘してゆき、着実に≪お風呂場おしっこ愛好家≫を増やしていった。

アイドルA「Amazing! 日本では、お風呂でおしっこするのがcoolなんだねStrawberry!」

アイドルB「えっ、お風呂場でおしっこするのって、いま最新の美容法で、蘭もおすすめなの?じゃあ、ミシェルたちもやってみよっか」

アイドルC「はわわー、まさか、いちごたんもお風呂場でおしっこする派だったなんて、おとめ、感激ですー」

アイドルD「その……蘭とかえでがそう言うなら……このユリカ様もしてあげないこともなくもなくってよ」

アイドルE「まあ!いちご様、つまり、お風呂でおしっこをするのがアイドルの嗜みなのですね!/バン!\ あ、このさくらも、ずずずいーーーーっと、いたしまするーーーー!!」

アイドルF「あっ……まぶしっ」

アイドルG「まさか、イケナイ刑事にそんな秘密が……うん、あおい、私も役作りのためにやってみるよ」

……そんなこんなで、遂にはスターライト学園中等部の実に7割の生徒が≪お風呂場おしっこ愛好家≫となるに至ったのである。

しかし、ここまで広まってくると、当然、このことがどこからか漏れて、学園の大人たちの耳に入ることになる。

「これは一体どういうことかしら?訊けば、あなたたちが率先して広めているそうじゃないの」

星宮いちごと霧矢あおいは学園長室に呼び出され、織姫学園長から詰問された。

「お風呂場でおしっこすると、解放感があって気持ちいいんです。フフッヒ」

「星宮、私はそんなことを訊いてるんじゃありません」

「あの……したあとはちゃんとお湯で流しますし、体もちゃんと洗ってから湯船に浸かりますから、衛生上も問題ないと思うのですが」

「霧矢……星宮だけならともかく、あなたまで一緒になって何ですか」

「すみません……」

「とにかく。今後、お風呂場でのおしっこは禁止とします」

「……」

というわけで、霧矢あおいの野望はここで潰えてしまった。

……かのように見えたのだが。

その日の深夜の学園長室。

「ふう……。今週は処理しなければいけない書類が多くて大変……。って、もうこんな時間。今日はこれくらいにしましょうか」

――コンコン、ガチャッ。

「失礼します」

入ってきたのは、メガネをかけてスーツを着た、OL然とした女性。やけに高い鼻と、鋭く切れ長の目が印象的だ。

「学園長、今日はもう遅いですし、寮の方にお部屋を用意したので、そちらでお休みになられてはいかがですか……と庶務課長が申しておりますが」

「あらそう、ありがとう……って、あなた見かけない顔ね。新しく入った人かしら?」

「はい、先日庶務課に配属になった霧島です。これからよろしくお願いいたします」

「そう、霧島さんね……このところ忙しくて、庶務の方には顔を出せていなかったわね。こちらこそよろしく」

「はい」

「ちょうど今、私も仕事を切り上げようとしていたところなの。あなたもそろそろ休みなさい」

そう言ったあと、織姫学園長は肩のあたりをさする。

「肩こりですか?」

「ええ、こう書類とにらめっこばかりしていると、肩が凝ってしまっていけないわ」

「お疲れさまです……。あっ、そうだ、あの、もうこの時間ならば生徒も全員寝ているので、寮の大浴場の広々とした浴槽に浸かって、体をほぐされてみてはいかがでしょうか」

「そうね……じゃあそうしようかしら」

というわけで、織姫学園長は大浴場にやってきた。

――シャーーーーーーー

洗い場で汗を流したあと、浴槽に浸かる。

「ふう、いいお湯……」

お湯の中で体の各所を揉みほぐした後、浴槽のふちに頭を乗せて、天井をぼーっと眺める。

――チャポン

時折天井から落ちてくる水滴の行方を目で追いながら、何か物思いに耽っているようだ。

「それにしても……いちごちゃんも、お風呂場でおしっこをするようになっていたなんてね……」

寮のお風呂に来たからか、先ほどの話題を思い出し、そんなことをつぶやく学園長。心の中で、先ほどの星宮いちごの言葉を反芻する。

――お風呂場でおしっこすると、解放感があって気持ちいいんです

星宮いちごの姿と重なる、もう一人の女性の陰……。

「ふふっ、昔のあなたにも同じようにして誘われたのを思い出すわね……ミヤ」

――ザザーーーーー……

おもむろに湯船から上がると、織姫学園長は何かを探すように周囲を見回している。

「さっき、星宮たちにはああ言ったけれど……あった」

彼女が目を止めたのは、あの、洗い場の隅の排水口だった。そのそばまで歩いて行き、織姫学園長はしゃがみ込む。

――・・・・・・・・……

「ふう……やっぱりやめられないわね、これ……」

――ガラッ

突然浴室と脱衣場とを仕切る扉が開いた。

――ゞゞ!!

いつぞやの霧矢あおいと同じように、織姫学園長もビクッと全身を震わせ、全力を出し切ってしまう。そして振り返り、入ってきた者の顔を見た。

「あ、あなたは……霧島さん!?どうしてここに……」

「ふっふっふ……」

霧島と名乗るその女性が、不敵な笑い声を発しながら、自分の顔の表面から皮膚のようなものを剥ぎ取ると、その下からは本当の顔が現れた。

「き、霧矢……」

「イケナイ刑事で共演した怪盗アルバート・ラパン8世さんから学んだ変装テクが、こんなところで役に立つなんてね。……それにしても学園長、やっぱりあなたも、お風呂場でおしっこする派だったんですね」

「……」

「しかも、おしっこが禁止されているはずの、学園の寮の大浴場でするなんて……。これでは、生徒に示しがつかないと思うのですが……」

「……ああもう、分かったわ。いいでしょう。ただし、大っぴらに許可することはできないので、黙認ということにします。あと、節度を持ってすること。……これでいいかしら?」

「ありがとうございます、それで十分です」

と、いうわけで、学園長も巻き込み、霧矢あおいのお風呂場おしっこ大作戦はこれからも続いていくのであった。

「ところで霧矢……あなた、どうして私がお風呂場でおしっこする派だと分かったの?」

「私には分かるんです……アイドルのおしっこの匂いが!」